タリヘーレ四重奏団 in 三木山 演奏会




「フランス近代音楽の響き」と銘打って、フローラン・シュミット、イベール、フォーレ、ショーソンを取り上げました。フランス音楽は、ドイツ音楽中心主義のクラッシック界にあって、世界的に、どちらかと言えばないがしろにされてきたことは確かです。吉田秀和先生が「最晩年フォーレのインスピレーションは枯渇した」と主張したことは良く知られていますし、「フランス音楽ねえ」という反応が、普通に聞こえてきます。作曲家の名前もドイツの作曲家に比べるとはるかに無名ですし、フランス音楽の音楽的レベルまで低いかのように言われている昨今です。しかし、そうした認識は、やはり無知のなせる技と言わざるを得ないでしょう。吉田先生も、のちに自らの非を認め、その音楽的に高い境地に達したフォーレ晩年の作品を見直していますが、フランス音楽はもっと様々な機会に演奏され、紹介され、評価されてしかるべきだと思っています。

私についていえば、初めてフォーレのピアノ三重奏曲を聴いたときは、1楽章と2楽章は「きれいだな」と感じましたが、最終楽章に関して「なんなの、これ」という印象を持っていました。ショーソンのピアノ四重奏曲の第2楽章は、美しい曲で有名なので知っていましたが、第1楽章の出だしを初めて聴いたときに、その中国風の旋律に吹き出してしまいました。それから年月が流れ、自分で演奏しようという気になってきました。フランス音楽の響きがここちよいものになってきたのです。

今回の演奏会は、ショーソンの四重奏を全曲演奏することが最大の目的でした。当初は、この長大なフランス近代音楽を全曲演奏するのだから、他の曲は短く、ということで、ドイツバロックのトリオソナタをプログラムに入れたりしていましたが、最終的に、以前演奏したことのあるフォーレのトリオを加えて、今回初めて見たフローラン・シュミットの「偶然」も加える形で、フランス近代音楽に的を絞った演奏会にすることになりました。なぜそうなったかと言えば、フローラン・シュミットはビオリストが卒論、修士論文で選んだ作曲家であり、「偶然」の譜面を持っていて、やってみようと言っていたからということと、今回、初めて加わったバイオリニストがフランス音楽が極めて好きで、フローラン・シュミットの「偶然」をちょっと弾いてみようということで試してみたら、面白い、ということになったからです。

今回初めて合わせてみたフローラン・シュミットは、チェリストの私には、もう限界の曲でした。1936年作曲ですから、近代から抜け出そうと言う時代であり、ジョン・ケージが既に実験的な音楽を発表している時期だったので、おして知るべしです。何が何だかわからない状態でした。これは必至で練習しました。しかし、4人の音、リズムがきれいに合わさった瞬間かもしだされる、えも言われぬ洒落た雰囲気に、病みつきになってしまいました。次回は、全曲演奏をやろう、ということにまでなったしまつです。

しかし、アマチュアがフランス近代音楽の全曲演奏会をやりぬくのは、聴いている方もつらいだろうと自ら考え、合間に、口直しという意味で、日本の唱歌を編曲したものを入れるということにしました。その結果、以下のようなプログラムになりました。




アンコール(デザート)では、「あんたがたどこさ」のピアノ四重奏編曲を演奏しました。大変なプログラムでしたが、80名を越える方々に聴いていただくことができました。長時間にわたってご清聴いただき、ありがとうございました。


   フローラン・シュミット ピアノ四重奏曲「偶然」 (第一楽章と第四楽章)



   イベール 二つの間奏曲 (原曲はフルートバイオリンのために書かれていますが、二つのバイオリンでもとてもきれいでした)



   フォーレ ピアノ三重奏曲 (全曲)



  ショーソン ピアノ四重奏曲 (全曲)(ステージがガラス張りで、西日が強く入ってきて、カーテンを半分閉めましたが、意味ありませんでした)