タリヘーレ四重奏団演奏会 in 神戸 2011






東亜ホール

アーンのピアノ四重奏曲とフローラン・シュミットの「偶然」全曲をやりたいと思い立った時には、神戸近辺の主だったホールの週末は空いておらず、唯一、この東亜ホールがクリスマスの25日だけ空いていました。今年のクリスマスは23.24.25と3連休だったので、この日の演奏会などのイベントは避けていたのかもしれません。このホールは、アルテムジカ・バロック・アンサンブルで2回使っており、元町からすぐという便利さがとても魅力のホールです。ただ、残響効果がなく、弦楽器にとっては響きのよいホールとは言えませんでした。今回はピアノを初めて使うので、ピアノだけ響いて弦が聞こえないということになるのではないだろうかと心配でした。練習の時に確かめると、確かに弦は「生音」でしたが、ピアノの音がさほどうるさくなく、弦の音もちゃんと聞こえるバランスになっていることもわかりました。実際にどのように聞こえていたのか、演奏会終了後に聞いてみたら、「そんなに響きが悪いという感じはしなかった、芸術文化センターの小ホールに比べたら落ちるけど」という感想でした。ビデオで録音した音も、さして悪くはありませんでした。次回もピアノ四重奏の演奏で、使おうかと思っています。

演奏

アーンの「ピアノ三重奏曲第3番」、フローラン・シュミットの「偶然」の順で演奏し、15分間の休憩をはさんで、最後にショーソンの「ピアノ四重奏曲」を演奏しました。三連休の最後、そしてクリスマス当日ということ、さらには、フランス近代の室内楽だけのプログラム、ということから、聴きにきてくださる方が極端に少ないだろうと思っていたのですが、蓋をあけてびっくり。100人を超す方々に来ていただけました。最初、80席あまりを用意していたのですが、とても足りなくて、あとで椅子を大量に追加するとい盛況でした。貴重な時間を割いてきていただいた皆様、本当にありがとうございました。アンコールに、フォーレの「ピアノ四重奏曲第2番」の第2楽章を演奏しました。

フランス近代音楽の響き

今回で、「フランス近代音楽の響き」は3回目となりました。第1回目は、三木山森林公園音楽ホールで、フローラン・シュミットの「偶然」から1曲目と4曲目、イベールの「二つの間奏曲」、フォーレの「ピアノ三重奏曲」、そしてショーソンの「ピアノ四重奏曲」をえんそうしました。第2回目は、フォーレの「ピアノ三重奏曲」、サン・サーンスの「ピアノ三重奏曲第2番」、そしてショーソンの「ピアノ四重奏曲」でした。毎回ショーソンのピアノ四重奏曲を演奏してきたのですが、今回は、めったに演奏されることのないアーンのピアノ四重奏曲を演奏し、一回目にちょっと演奏したフローラン・シュミットの「偶然」を全曲演奏すること、が大きな目標でした。アーンは、日本ではその名前さえほとんど知られていない作曲家ですが、パリの楽譜屋で「アーンのピアノ四重奏曲第3番をください」と言うと、すぐに「はい」と楽譜が出てきたことを考えれば、フランスでは結構有名な作曲家だろうと思います。歌曲の作曲家らしく、古典的で美しい旋律にあふれた曲ですが、転調と転リズムが頻繁で、さすがに「近代音楽だ」と思わせる曲です。楽譜に慣れれば、ピアノ以外は、弾くだけならさして難しくはないのですが、つかみどころがなく、アンサンブルとしては考え込むことも多い曲でした。演奏してみての自己評価としては、ただ弾いているだけという観が抜けなかったと思います。もっと洒落た曲だと思うのですが、難しいです。

一方フローラン・シュミットの曲は、私(チェロ)にとってはテクニックの限界を越えた曲だったので、大変でした。楽しそうに演奏しているバイオリンとビオラを横に見ながら、悪戦苦闘で、結局はきちんと演奏することはできませんでしたが、やればやるほど、その曲の面白さがわかってきました。初めて譜面をみて音を出した時、「何なの、この曲は?」「わけがわからない」という印象だけでしたが、各楽器が緊密な連携をし、音と音が巧みに組み合わされ、絶妙なリズム構成で、しかも洒落た雰囲気を醸し出す名曲だと、今では、思っています。

ショーソンは、言うまでもなく名曲の誉れ高い曲ですので、やればやるほど、その面白さ、素晴らしさを実感するのは言うまでもありません。今後も我々四重奏団のレパートリーとして大事にしていきたいと思っています。

次回のタリヘーレ四重奏団演奏会では、「フランス近代音楽の響き」とは銘打ちませんが、フォーレの「ピアノ四重奏曲第2番」を入れようと考えています。

   
フローラン・シュミット 偶然                            ショーソン ピアノ四重奏曲イ長調