タリヘーレ三重奏団演奏会

~ テオドール・デュボワ没後100年記念演奏会 第二弾!~




                             Ⅰ

響きの美しい神戸聖愛教会で、「テオドール・デュボワ没後100年記念演奏会 第二弾!」を開催しました。当日は70名近くの方々においでいただきました。ありがとうございました。

2024年がデュボワの没後100年にあたるので、少しばかり遅くなったのですが、日本的に言えば同じ「年度」なので、まあいいか、ということでタイトルをつけました。第一弾は、9月に東京でおこないましたが、ピアノ三重奏曲ばかりの演奏会だったので、今回は、ピアノの入った室内楽で残るピアノ四重奏曲とピアノ五重奏曲の演奏に、前座としてピアノ三重奏曲第1番の第1楽章を加えて演奏しました。

タリヘーレ三重奏団としては、デュボワのピアノ五重奏曲をするためには、あとヴァイオリンかヴィオラ、それにオーボエを探す必要があります。やってみたいけど、と思いながら演奏はあきらめていました。ところが、しばらく連絡をとっていなかったかつてのタリヘーレ四重奏団のヴァイオリニストから連絡があり、話をしてみると、オーボエと一緒に活動をしているということでした。デュボワの五重奏曲も知っていて、それも練習してみたというのです。渡りに船で、顔合わせ演奏をおこなって、早速開場を探し、3月に演奏会をすることになった次第です。

曲目として、ピアノ四重奏曲と五重奏曲に決めましたが、三重奏曲がどんな感じなのか紹介したいと思い、第1番の第1楽章だけを最初に演奏することにしました。その結果、三重奏、四重奏、五重奏と編成が順に大きくなっていく形の演奏会になりました。

                             Ⅱ

テオドール・デュボワは、19世紀から20世紀にかけて活躍した作曲家で、自らのことをポスト・ロマン派と位置付けており、パリ音楽院の院長、フランス・アカデミーの会長などを歴任したフランス音楽界の巨匠でした。しかし、世紀の変わり目あたりから、フランス音楽はロマン派から近代派音楽へと変貌を遂げ始めました。さらにデュボワの晩年である1920年代になると、調性のない無調音楽が先端を走るようになりました。デュボワは1837年生まれで、そうした流れを批判する急先鋒でした。しかし時代は、近代音楽から現代音楽へと進み、デュボワは歴史の記憶から抹消されて「忘れられた作曲家」になってしまったのです。近年ようやく再評価の気運が高まり、その美しい音楽が少しづつ演奏されるようになってきましたが、日本では、まだまだ「忘れられた」ままの状態が続いています。

                             Ⅲ

当日のプログラムに掲載したそれぞれの曲の初演時の講評を書いておきます。

ピアノ三重奏曲第1番 
「新し三重奏曲は大成功を収めた。非常に厳密に書かれているにもかかわらず細部まで魅力にあふれた美しい曲で、現代の室内楽には珍しく一瞬たりとも退屈することがなかった」。

ピアノ四重奏曲イ短調
「デュボワの四重奏曲は、最も暖かい歓迎を受けた。常にメロディックな主題が作り出す音の織物を通して現れる、美しい歌うようなフレーズ、明確で非の打ちどころのない形式、奇妙さや下品さがないモチーフ、これらが単調ではない常に魅力的で新しい作品を作り出している。そのことが、観客の繰り返される拍手を正当化するものと私たちには思われた」。

ピアノ五重奏曲ヘ長調
「作品は、熱狂的な聴衆から称賛されたが、質の高い明快さ、純粋な形式、和声的な新しい試み、そして率直さが際立っている。この作品は、フランス楽派の現代的な作品の中で最高の位置を占めるものの一つとなっている」。

             ピアノ五重奏曲ヘ長調